島唄独特のテクニック

 島唄の唱法で、もっとも注目されるのは裏声を多用することである。この事によって音域は大きく広がり、表現力がそれだけ増すことになる。
キーの高い唄に合わせて蛇皮線のキーも高く設定されている。蛇皮線に関しては別項参照

 これは「奄美で古くから女性を大切にし、たたえていたから、歌うときも女性の高いキーに男性の方が合わせるのである」と言われているが、本当のところはどうなのだろう。

 日本本土では裏声を逃げの声として禁止しているが、奄美では裏声を正当とする。世界の民族音楽の中
でも裏声を活用しているものは少なく、スイスのヨーデルや黒人霊歌ぐらいではないか。

 そしてもう一つ特徴的なのは、島唄は譜面を持たない音楽であるということである。譜面を持たないので、唄の拍数が唄者の気分次第となる。これはPopsやRockから音楽を始めた私のような蛇皮線奏者にとって、困った点でもある。演奏しづらいのだ。もちろん、唄いながら自分で蛇皮線も弾く人にはあまり問題にならないだろうが...。
島唄ではまず唄があって伴奏はあくまでも唄を助けるもの・唄の間を埋めるものと考えるようだ。それはおそらく蛇皮線が比較的近年になってから登場したからではないかと推測できる。沖縄におけるサンシンは宮廷音楽で使われていた為、数百年前からあったようだが、奄美の場合は幕末でもまだ蛇皮線は登場していない。1850年に書かれた南島雑話(名越左源太作)によると「チヂンはあるが三線はない」とある。当時の蛇皮線は沖縄からの移入品で高価なため庶民には手が出なかったのだろう。コオル兄さんが小学生の時代(昭和3〜4年頃)でも蛇皮線は高価で買えなかったため、自分で作ったなどという話を聞いたことがある。そう考えると奄美で蛇皮線が一般に普及したのは戦後なのかも知れない。唄に比べるとかなり歴史が浅いようだ。

●余談
 東京生まれ東京育ちの私の感じたところでは、奄美は男尊女卑の強い所に思われる。
 男性には貴族か作家のペンネームのような格好の良い名前が付けられるが、女性には「なべ」だの「カマ」だの「フタ」の類である。
これは名前だけに見られる現象(男尊女卑)なのだろうか?(もちろん、現在の奄美はこんなことはないと思います)
●余談の余談(2004.3.19.追記)
上記の名前の行について各方面からご意見を戴いた。
一つはナベ・カマ・フタの類は決してテキトーにつけた名ではなく、将来『食』に困らないように食に因んだ名を付けたという話だ。これは聞いてなるほどと思った。
またもう一つの説は「火を使う台所は神聖な場」という考えが昔の奄美にあったので、ナベ・カマ・フタの類は神聖な名だという話だ。こちらも「もっともだ」と思う話である。

 


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